ニュースダイジェスト5月号

経済

紙の領収書、即時廃棄可能に 税制改正で電子化加速

2021年度の税制改正大綱で領収書の電子化保存がしやすくなる。領収書を出す社員や、管理する事業者の負担が大幅に減ることになった。企業には一定期間帳簿や領収書などの書類を保存する義務がある。領収書をスキャナーやカメラなどで撮影して電子保存することは認められており、電子帳簿保存法で規定している。

ただし、税務署の事前承認が必要だ。提出者による紙の領収書への署名も必要と、結果的に業務の軽減にはつながっていない。しかし、今回の税制改正大綱で盛り込まれた電子帳簿保存制度では、領収書は電子化の事務処理の要件を大幅に緩和された。提出者の署名や経理担当者の確認を廃止した。タイムスタンプの付与期限も2カ月以内に延ばしたほか、適正な要件を満たせば、紙の領収書の廃棄も認めた。税務署の承認制度も廃止されることになる。

給料でも待遇でもない これからの企業は組織文化で選ばれる

働き方改革や新型コロナウイルス感染症など、生活環境は大きく変化した。就職する企業の選び方にも変化が現れているようだ。これまでの会社を選ぶ条件は、年収や勤務地、福利厚生、雇用形態といった目に見える条件が基本だった。

しかし、これからは個人と企業の価値観の一致が重要になる。つまり、企業側に組織文化を明確にすることが求められる時代になる。企業側としても、求職者の能力やスキルといった表面上の能力ではなく、組織の持つ哲学や価値観に共鳴できるか、という一段深い部分で求職者を選ぶようになる。組織全体の生産性を高めるような採用をしなければならない時代が到来しつつあるようだ。

ジョブ型人事、6割が「上司の評価力」に不安

新しい働き方として、ジョブ型人事制度の導入が進んでいる。仕事の内容をあらかじめ決めて会社と従業員が合意し、達成度合いを見る人事制度だ。職務別に仕事の内容と必要なスキルなどを定義し、職務に見合うスキルを持つ社員を割り当てる。

このジョブ型の課題は、管理職の評価能力だ。日経BP総合研究所イノベーションICTラボがビジネスパーソンを対象に実施した調査では、人事評価される側の6割が上司の評価能力に不安を抱いている、という結果になった。現在ジョブ型未導入の日本企業においては、管理職の評価能力を磨くための専門的な研修などを設けているところは多くない。人事部門が定めた評価ルールはあるものの、評価する人によって評価の尺度や厳しさが異なる可能性がある。ジョブ型を導入する企業には、従業員の不安を払拭する制度設計と準備、管理職への評価研修などの徹底が求められる。

企業文化は戦略に勝るのか 

日本生産性本部と米国のコンファレンス・ボードが実施した調査では、「社会を含む全ての利害関係者の利益に沿って経営をする」と答えた経営者が世界で6割を超えた。コンサルタントのデロイトトーマツグループによれば、「今後10年の社会課題」として各国経営者2,260人が挙げたのは「疾病」「気候」のほか、「格差」「偏見と不平等」「移民や難民」と多岐にわたった。

セールスフォース・ドットコムのマーク・ベニオフ最高経営責任者は、世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に毎年登壇している。同社は、「信頼」「平等」など四つの企業理念や、社員に就労時間の1%をボランティア活動に充てるよう促すなど、企業文化重視の経営で知られている。1960年以降は戦略が重要視されてきたが、2000年代に入ってからは、戦略と文化のどちらが有効かを検証した。現在は、企業文化の定着こそが戦略を推進する原動力だ、という意見もある。

企業が経済学者の知恵を借り始めた

今や、IT(情報技術)分野のテクノロジーなどを駆使したいわゆるテックと経済学の融合なしには生き残れない時代となった。学界と実業界を股に掛ける起業家の取り組みが始まっている。某IT大手企業は、AI(人工知能)開発で米エール大学の教授と連携している。データから現象の原因と結果を分析する「因果推論」に基づき、商品の需給などをAIが予測して価格やクーポンの割引額を決めるサービスを開発した。

インターネット衣料品通販大手は、機械学習のアルゴリズムを使った商品検索・推薦技術を開発した。2020年8月に、アルゴリズムの技術基盤と2,800万件超の消費者のビッグデータを公開して、電子商取引企業に応用を促す取り組みを始めている。大手小売りや地方の食品会社、教育関連の企業などと同分野での提携交渉も進めている。今後、国境のないテック分野で世界の巨大テック企業と渡り合うには、こういった取り組みが欠かせなくなるだろう。

社会

再エネ遅れる日本に三つの壁 

菅政権が2050年に二酸化炭素の排出を実質ゼロとする目標を掲げた。その実行計画でも、再生可能エネルギーの導入を「最大限進める」と明記した。しかし、日本の電力において同エネルギーが占める割合は現状18%だ。この割合を上げていく上で三つの壁に直面している。

まず、再び農地として使用することが難しい「荒廃農地」の規制だ。全国で約19万ヘクタールあるが、原則として太陽光発電など別の目的に使えない。次に、「環境アセスメント」の壁だ。風力発電を導入する際は、事前に環境への影響を調査する環境アセスメントの審査を受けなければならない。最後に、「送電網」の壁だ。昨年ようやく大手電力会社から「送電」を分離する制度となったが、新規参入が多い再生可能エネルギーが使える容量が少なくなっている。これからは、狭い国土をどう活用していくかという、政策が早急に求められる。

3.11から10年 あの日、自衛隊はどう動いた

東日本大震災から10年。防衛省は、この未曽有の大災害に、史上最大の10万人態勢で対応した。その中心となったのが隊員7万人を派遣した陸上自衛隊で、約2万人の人命を救助した。

震災前の2008年、東北方面隊は、マグニチュード7程度の地震を想定した計画を作成し、震災対処実働訓練を行っていた。そのかいもあり、震災発生の数分後には、陸上自衛隊の五つのエリア、北部(北海道)、東北(東北)、東部(関東甲信越)、中部(中京北陸近畿中国四国)、西部(九州沖縄)に、待機部隊と派遣部隊を明確に分ける的確な指示が出ていた。米軍との連携では「トモダチ作戦」と称し、孤立した島などへの救助活動を実行した。こうした迅速な活動があったからこそ、2万人以上の人命を救助できた。防衛省、自衛隊の存在には憲法上の解釈などで賛否の声がある。しかし、自然災害時の活動などを鑑みると、否定論だけで済まされる問題ではないだろう。

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